歯の寿命は「基礎工事」で決まります

立派な家を建てても、それを支える地盤や基礎がもろければ、地震や台風ですぐに傾いたり倒壊したりしてしまいます。
歯科治療においても、これと全く同じことが言えます。
どれほど高価で美しいセラミックの被せ物を入れたとしても、その土台となる「歯の根(根管)」が病気にかかっていれば、いずれ痛みが出たり歯茎が腫れたりして、最悪の場合は抜歯せざるを得なくなります。
そうなれば、被せ物もすべて無駄になってしまいます。
根管治療(歯の神経の治療)は、まさにこの「基礎工事」にあたる治療です。
建物の基礎と同じで、外からは見えない部分ですが、歯を長く残せるかどうかは、この根管治療の精度にかかっています。
ヤマシタデンタルクリニックでは、目に見えない部分だからこそ一切の妥協を許しません。
先進の医療機器と科学的根拠に基づいた薬剤を駆使し、再発リスクを極限まで抑えた精密な治療を行います。
ご自身の歯を一生使い続けたいと願う患者様のために、私たちは全力を尽くします。

根管治療とは

歯の中心部には、「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経や血管が通っている管があります。
これを「根管(こんかん)」と呼びます。
虫歯が進行して神経まで達すると、激しい痛みが生じたり根の先に膿が溜まったりします。
根管治療とは、この細菌に汚染された神経や血管を取り除き、根管の中をきれいに洗浄・消毒して、再び細菌が入らないように薬を詰める治療のことです。
この治療の難しさは、根管の形が非常に複雑であることに起因します。
根管は真っ直ぐな一本道ではなく、木の根のように曲がりくねっていたり網目状に枝分かれしていたりします。
暗く狭いトンネルの中にある細菌を、肉眼での確認が困難な状態で、ミクロン単位で除去しなければなりません。
これが、根管治療が「歯科治療の中で最も繊細で難しい」と言われる理由です。

ヤマシタデンタルクリニックの根管治療におけるこだわり

1. CT撮影による「見えない根管」の可視化

従来のレントゲン写真は2次元(平面)であるため、重なり合った根の状態や奥行きにある病巣を正確に把握することは困難でした。
「おそらくこうなっているだろう」という経験則や勘に頼って治療を進めることは、見落としや事故の原因となり得ます。
当院では治療の精度を高めるために、「歯科用CT」を活用しています。
CT撮影を行うことで、歯の根の形態、数、曲がり具合、そして病巣の大きさを3次元(立体)画像として鮮明に確認することができます。

「根の先が直角に曲がっている」
「隠れた細い根管がもう一本ある」

これらが治療前に分かっていれば、適切な器具を選び、確実なアプローチが可能になります。
見えない部分を見えるようにする。
これが、当院の精密治療のスタンダードです。

2. 柔軟な「ニッケルチタンファイル」の使用

根管の中の汚れを削り取るために、「ファイル」という細い針のような器具を使用します。
従来から使われているステンレス製のファイルは硬いため、大きく曲がった根管に使用すると、本来の道とは違う方向に穴を開けてしまったり根管の形を変えてしまったりするリスクがありました。
当院では、非常に柔軟性に優れた「ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)」を導入しています。
このファイルは形状記憶合金の特性を持っており、どんなに曲がった根管にもしなやかに追従します。
歯の内部を傷つけることなく、隅々まで汚れをかき出すことが可能です。
また、このファイルを「エンドモーター」という専用の電動機器に装着して使用します。
一定の速度とトルク(回転力)で制御しながら治療を行うため、手作業に比べてスピーディーかつ安全に処置を進めることができます。
患者様がお口を開けている時間を短縮することにもつながります。

3. 薬液洗浄による化学的なアプローチ

ファイルを使って機械的に汚れを取るだけでは、複雑な網目状の根管内を完全にきれいにすることはできません。
微細な枝分かれ部分に入り込んだ細菌は、器具が届かないからです。
そこで重要になるのが、薬液による「化学的洗浄」です。
当院では、次亜塩素酸ナトリウムやEDTAといった強力な洗浄液を使用し、根管内を洗浄します。
これにより、細菌の細胞壁を破壊したり削りカスを溶かしたりして、化学の力で無菌化を目指します。
さらに、薬液の効果を高めるために「超音波スケーラー」を併用します。
薬液で満たされた根管内で超音波を振動させることで、キャビテーション(発泡)効果と強力な水流が生まれ、根管の奥深くに潜む汚れを浮き上がらせて洗い流します。
歯科医療は日々進歩しています。
当院では常に新しい薬液や消毒方法についての情報を収集し、効果が高いと判断したものは積極的に導入しています。
常にアップデートされた最良の薬剤を取り揃え、難治性の症例にも対応します。

4. 徹底した乾燥と緊密な充填

根管内を無菌化した後は、再び細菌が繁殖しないように空洞を封鎖する薬を詰めます(根管充填)。
この時、根管内が少しでも湿っていると、薬が密着せず隙間から再感染を起こす原因となります。
当院では、吸水性に優れた滅菌済みの「ペーパーポイント」という専用の紙を使用し、根管内の水分を徹底的に取り除きます。
完全に乾燥した状態を確認してから、ガッタパーチャというゴム状の詰め物とシーラー(接着剤)を用いて、隙間なく緊密に封鎖します。
この「乾燥」と「封鎖」の工程をおろそかにしないことが、治療後の予後を大きく左右します。
一つひとつの基本動作を確実に行うことこそが、成功への近道であると確信しています。

根管治療が必要になる症状

以下のような症状がある場合、根管治療が必要になる可能性が高いです。

ズキズキとした激しい痛みがある

何もしなくても痛い、夜眠れないほどの痛みがある場合は、神経が急性の炎症を起こしています(歯髄炎)。

温かいものがしみる

冷たいものだけでなく、熱いお湯や食事がしみるようになった場合は、神経の炎症が進行しているサインです。

噛むと痛い・違和感がある

神経が死んでしまい、根の先で炎症が骨に広がっている可能性があります(根尖性歯周炎)。

歯茎に白いおできができている

「フィステル」と呼ばれる膿の出口です。
根の先に溜まった膿が、骨を溶かして歯茎から出てきている状態です。

過去に神経を取った歯がまた痛む

以前の治療で取り残した細菌が繁殖したり、被せ物の隙間から新たな細菌が入ったりして、再発している状態です。

治療の流れ

  • STEP 1検査・診断
    デジタルレントゲンやCT撮影を行い、根の状態や病巣の広がりを確認します。
    また、電気診(神経が生きているかどうかの検査)や打診(叩いて痛いかの検査)を行い、総合的に診断します。
    治療の内容や期間について、詳しくご説明します。
  • STEP 2隔壁の設置(必要な場合)
    虫歯で歯が大きく欠けている場合、そのままでは治療中に唾液(細菌)が入ってきてしまいます。
    必要に応じて、コンポジットレジンなどで歯の壁(隔壁)を作り、治療環境を整えます。
  • STEP 3根管の拡大・清掃
    歯の上部に穴を開け、ニッケルチタンファイルなどを使って汚染された神経や感染物質を除去します。
    根管の形を整え、薬液が奥まで届くように道を広げます。
  • STEP 4根管の洗浄・消毒
    各種薬液と超音波洗浄器を使用し、根管内を徹底的に洗浄します。
    その後、消毒薬を根管内に貼薬し、仮の蓋をして経過を見ます。
    この工程を、根管内がきれいになるまで数回繰り返します。
    細菌は非常にしぶといため、焦らず確実に行う必要があります。
  • STEP 5根管充填(お薬を詰める)
    痛みや膿がなくなり、根管内が無菌状態になったことを確認したら、根管を封鎖する薬を詰めます。
    ペーパーポイントで完全に乾燥させ、ガッタパーチャポイントを隙間なく充填し、根管を封鎖します。
    レントゲンを撮影し、薬が根の先までしっかりと入っているかを確認します。
  • STEP 6土台の作製・被せ物の装着
    根管治療が終わった歯は空洞になっており、強度が低下しています。
    ファイバーコアなどの土台(コア)を立てて補強し、その上に精密な被せ物(クラウン)を装着します。
    被せ物の精度も、再感染を防ぐためには非常に重要です。

根管治療と「抜歯」の境界線

「他院で抜歯しかないと言われたのですが、残せますか?」
セカンドオピニオンで来院される患者様から、よくいただく質問です。
当院では、CT診断やマイクロスコープを用いた精密な治療により、他院で抜歯と診断された歯でも保存できる可能性を模索します。
しかし、残念ながらすべての歯を残せるわけではありません。

保存が難しいケース

・根が縦に割れてしまっている場合(歯根破折)
・虫歯が根の奥深くまで進行し、土台を立てることが不可能な場合
・重度の歯周病で、歯を支える骨がなくなっている場合

無理に残すことで、かえって周囲の骨を溶かし、隣の健康な歯に悪影響を及ぼすこともあります。
その場合は、潔く抜歯をしてインプラントやブリッジにした方が、お口全体の健康にとってプラスになることもあります。
「残せるか、残せないか」の判断基準を明確にし、患者様にとって最善の選択肢をご提示します。

よくあるご質問

Q. 治療期間はどのくらいかかりますか?

根の状態や膿の大きさによって大きく異なります。
神経が生きている初期の段階であれば2〜3回で終わることもありますが、再治療の場合や膿が溜まっている場合は、消毒に時間がかかるため数ヶ月かかることもあります。
「なぜ時間がかかるのか」をご説明し、根気強く治療を続けることの重要性をお伝えします。

Q. 治療中は痛みますか?

治療中は局所麻酔を使用しますので、痛みを感じることはほとんどありません。
ただし、根の先に炎症がある場合は麻酔が効きにくいことがあります。
その場合は、麻酔の方法を工夫したり一度お薬を入れて炎症を鎮めてから治療を行ったりします。
治療後に一時的に痛みが出ることがありますが、痛み止めで治まる範囲がほとんどです。

Q. 途中で治療をやめてもいいですか?

絶対にやめないでください。
根管治療の途中で中断すると、仮の蓋が取れて根管内に唾液や細菌が入り込み、爆発的に細菌が増殖します。
そうなると、あっという間に抜歯が必要な状態まで悪化してしまいます。
お仕事などで通院が難しくなった場合は、必ずご相談ください。

Q. 成功率はどのくらいですか?

根管治療の成功率は100%ではありません。
日本の保険診療における一般的な成功率は50%〜70%程度と言われていますが、当院ではCTやニッケルチタンファイル、厳密な消毒プロトコルを用いることで、可能な限り高い成功率を目指しています。
しかし、複雑な形状や細菌の抵抗性により、どうしても治癒しないケースも存在します。
その場合は、外科的な処置(歯根端切除術)などを検討します。

Q. 保険は効きますか?

はい、当院の根管治療は基本的に保険診療の範囲内で行っております。
CT撮影(条件あり)やニッケルチタンファイルの使用も保険が適用されます。
より高度な材料や時間をかけた治療をご希望の場合は、自費診療での根管治療もご提案可能です。

見えない土台こそ、誠実に守り抜く

根管治療は、地味で時間のかかる治療です。
患者様にとっても、口を長く開けていなければならず、何度も通院しなければならない負担の大きい治療だと思います。
しかし、この治療を丁寧に行うかどうかが、その歯の寿命を決定づけます。
数年後に「あの時、しっかり治療しておいてよかった」と思っていただけるよう、私たちは一本の歯に対して誠実に向き合います。
歯の痛みや長引く治療でお悩みの方は、ぜひ一度ヤマシタデンタルクリニックへご相談ください。